
今回は、予防接種(=ワクチン)についてお伝えしていこうと思います。
開院して4ヶ月を過ぎましたが、「予防接種をしない」という選択をされているご家族が他の地域と比べて多いと感じています。
お父様、お母様が我が子を守りたいと思われている、その気持ちはみんな同じ。
その選択をされた方々を否定するつもりはありません。
ただ、ちゃんとした正しい情報で選択していますか?ということ。
コロナワクチンの時に副反応が騒がれたのが記憶に新しい今、漠然と「ワクチンは怖い」と思っている方が増えたように思います。
そしてそれを煽るかのように、ワクチンがいかに怖いものなのか、そして接種する必要はない、と根拠の提示もなくYouTubeやネット記事が拡散されています。
小児科医は儲けるために予防接種を勧めない医者はいないんだ、という記事も目にしました(そんなわけあるか!そもそもワクチン接種をさせず、感染症を流行させた方が儲かるのでは?もしワクチンが危ないものと思っていたら、そんな子ども達を危険に晒すようなこと、おすすめするわけがありません!小児科医を冒涜した発言で、悲しくなりました)。
この状況に、小児科医として、危機感しか感じません。
我が子を集団生活させている1人の母としても、とても恐怖を感じています。
予防接種を行う意義は大きく分けて2つあります。
①我が子を守る(接種することで、感染する確率・感染しても重症化するリスクを下げてくれます。)
②他の子を守る(集団免疫と言われるものです。みんなが予防接種をすることで、病気の流行を防ぎます。その結果、免疫不全などで予防接種が受けられない子どもたち・大人たちも守られます。)
総合病院、大学病院で勤務していた時に、感染症で辛い思いをしている子ども達を多くみてきました。
「予防接種を受けていれば、こんなにひどく(重症化)ならなかったかもしれないよね」
と先輩の先生や同僚達と肩を落とすことがありました。
実感しやすかったのは、最近定期ワクチンとなったロタウイルスです。
ワクチンが定期接種化してから、ロタウイルスに感染する子ども達も、感染して脳炎を起こしたり、低血糖や極度の脱水で運ばれてくる子ども達もガクンと減りました。
衛生環境が整ったから、もう昔のようにワクチンは必要ない。感染しても医学が進歩したから、困ることはほとんどない。
という主張をされている方もいるようです。
これは本当でしょうか?
実際に、臨床現場を経験された方達のお言葉なのでしょうか。
生後1ヶ月でワクチン接種前にHib(インフルエンザ菌)の髄膜炎に罹患してしまい、後遺症を残しているような子達もまだまだいます。診断がついて、治療を開始しても間に合わないこともあるんです。
2ヶ月以降、ワクチンを接種しなければ、そのリスクに我が子を晒し続けていることになりますよね。
百日咳や麻疹が最近流行していることは、ニュースでもよく耳にしますよね。
百日咳は、低月齢で罹患すると、命に関わります。人工呼吸器管理となってしまうことも多々あるような病気なのです。
麻疹は、感染すると肺炎や脳炎を起こしたり、しばらく経ってから亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という予後不良の病気に罹患したりすることで知られています。妊娠中に罹患すると、流産や早産を起こしやすくなったり、妊婦さん自身も重症化することもあります。
予防接種を受けることで、感染者が減ってきた病気が多くあります。
麻疹などは、空気感染です。誰か感染者が出ると、同じ空間にいる人みんなが感染のリスクに晒されます。
小児科クリニック受診時に同じ空間にいたスタッフ、患者さんが感染してしまったということが最近も起きています。
予防接種を接種しても抗体価が上がらない、免疫不全のため予防接種を接種できない人たちを守るためには、みんなが予防接種を受けることがとても大切なのです。
もしご自身、ご家族が妊娠中に予防接種未接種の方から麻疹をもらってしまって、流産してしまった。あるいは、早産で赤ちゃんが寝たきりになってしまったとしたら・・・どのような気持ちになるでしょう。
子どもに予防接種をさせずに罹患してしまって、寝たきりで話せなくなってしまったら?それでも、仕方なかったと思えますか。
長い年月、高い費用をかけて開発されたワクチンにはちゃんとした意味があります。
定期接種になるためには、数々の臨床試験を行なっています。
海外留学する際に、ワクチンを接種していなければ渡航できない国もあります。
日本でも、受験する際にワクチンレコードを求められる学校もあります。
愛しい我が子、大切な我が子に注射して、異物を入れることに対する恐怖もわかります。
でも、どうか正しい知識を手に入れてください。責任なくYouTubeやインターネットで配信している人の言葉だけを信じないでください。実際に感染症を診察している小児科医の話にも耳を傾けてください。
自分の子が集団生活する際に、自分の子が罹患して重症化するリスクもそうですが、他の子に感染を広げてしまうかもしれないリスクを、そしてその中から後遺症で悩む子が出てしまうかもしれないことをぜひ、もう一度よく考えてみてください。
その上で、ご家族がされた選択を私たちは否定するつもりはありません。
クリニックに来院するすべての子供達を守るために
予防接種未接種(年齢相当でない)の方々は、
①他の患者さんがいない時間帯にご案内します。
→必ず受診前に予防接種未接種である旨を電話して伝えてください。ご予約をお取りします。
②健診などの度に、しつこいと思われるかもしれませんが、予防接種についてお話しします。
あなた方がお子様を大切に思われているように、他の方々もお子様を大切に考えられています。
ご協力をお願い致します。
熱く話し過ぎましたね!
みんながhappyに過ごせるよう、引き続きお手伝いができれば幸いです。
院長 髙橋 英里佳